甚六屋年表
序章 : 夢来館〜甚六屋へ
1972.8
情報誌「ぴあ」創刊
映画・演劇・音楽の初の総合ガイド誌として月刊で創刊された。
編集スタッフの平均年齢は23.5歳という若さ、準備期間半年以上を費やしたそうである。
編集後記には、いつか都内版だけでなく全国版をと、スタッフの強い意志が見て取れる。
まだライヴハウス全般としての掲載は無く、コンサート以外は「生演奏の聞けるジャズ喫茶」という形で紹介されている。
その頃の島津貫司(後の甚六屋マスター)は青山学院大学の学生で、地元綾瀬の仲間が集まった音楽サークルのようなものの
中心にいた。
少なくとも月に一度は公民館などのホールを借り、精力的に音楽イベントを催していたのだった。
メンバーは高校生や社会人もいたようである。
現在、松戸を中心とした音楽イベント「E-JAM」を主催する島田氏もその中の一人で、まだ高校生であった。
そして、メンバーのほとんどは自らが楽器を演奏した。
そうした活動を数年続けた挙句、なんと、自分たちが住んでいた「松よう荘」というアパートの一室を、大家さんを説得してライヴハ
ウスに改造してしまったのだ。
このライヴハウスこそが「夢来館」(むらいかん)である。
1階角部屋、わずか六畳の広さ。エレキベースなど苦情が来そうなものは押入れに入って演奏した時もあったらしい。
こんな場所でもプロミュージシャンを呼んでいたのだから恐ろしい。
前方の客は演奏者を見上げて観ていたそうな、マスコミにも日本一狭いライヴハウスとして取り上げられるほどであった。
夢来館、甚六屋を通して出演した中川五郎さんもこの時の印象が強かったよう。
まるで人の部屋に来た様だったと当時を知る人たちは語る。
夢来館ポスター、イラストは当時の仲間の手によるもの
 *ポスターに書いてある文章はこうだ
 「夢来館」それはあらゆる人々が気軽に利用出来る空間です。
グリーンのドアを引くと、かつて見たことのない、狭いながらも居心地の
良さそうな部屋があなたを待っているのです。
ジャンルに囚われない音楽が部屋を包み込み、色々な町の人々から
発行されているミニコミ誌があなたの目に触れるでしょう。
 現在の社会で要求されているものは打算的な人間関係ではなく、赤
裸々に語り合え、深い信頼の元に生まれる人間関係であろう。
我々はこのスペースを主体として全ての人々に自由な形で開放したい
と思う。
  *以降、人間関係のトラブルも多々あったようだが、このようなコン
  セプトは生涯を通じて持ち続けたのであった。
1975.1
そしてこうした仲間の一人が今度は、三ノ輪に「モンド」というライヴハウスを立ち上げた。
喫茶店だったらしい場所を利用したこのライヴハウスは、かなり広いスペースで設備も本格的なものだったらしい。
開店当初こそ「夢来館」系のフォーク色が強いが、すぐにロック色の強いものになる。
今見ると、そうそうたるメンバーが出演していて驚かされる。
このような店が下町「三ノ輪」にあったとは!
※当時の「ぴあ」に基づく
三ノ輪「モンド」 1975年1月のスケジュール
  ドリンク+ショーチャージ(200〜400円) 6:30〜  
1/18 (オープン) 高田渡  
1/19   2:00〜: 友部正人  
     6:00〜: 田代友也  
1/20  シバ/じんじろう  
1/21  三上寛  
1/22  林亭+大熊秀和+1  
1/23  オレンジ・カウンティー・ブラザース/松本みどり  
1/24  田代友也+凧  
1/25  神無月  
1/26  2:00〜: 凧/ジャック・ハイ  
     6:00〜: センチメンタルシティーロマンス/いとうたかお
1/30  丸山祐一(トム)+雷  
1/31  マッチボックス・オリジナル・セッション    
三ノ輪「モンド」 1975年5月のスケジュール
  前売 800円  当日 1000円 6:30〜    
5/1〜2  ウエストロードB・B  
5/3   2:00〜: ウィーピングハープ・セノオ&ヒズ・ローラーコースター
     6:00〜: ウェストロードB・B  
5/4   2:00〜: アマチュアコンサート  
     6:00〜: 異邦人  
5/5   2:00〜:  音づれ草コンサート  
     6:00〜: 演劇「黙示体公演」  
5/6   大塚まさじ+いとうたかお  
5/7  オレンジ・カウンティー・ブラザース  
5/8  オレンジ・カウンティー・ブラザース  
5/10  ウエストコースト・デー  
5/11  2:00〜: センチメンタル・シティーロマンス  
     6:00〜: めんたんぴん  
5/12  パワーハウスB・B  
5/13  友川かずき  
5/14  ファッツボトルB・B  
5/15  カルメン・マキ&OZ  
5/17  頭脳警察  
5/18  2:00〜: 愚霊巣  
     6:00〜: 頭脳警察/ファッツボトルB.B           
5/19  ファッツボトルB・B  
5/20  キャラ/ぎんぎん  
5/21  エンプティ・ボトル/丸山拓一&スーパーオリジナルバンド
5/22  めんたんぴん+入道  
5/23  中川イサト/中川たかし  
5/24  ルージュ  
5/25   2:00〜:  あんぜんBUND  
     6:00〜: 裸のラリーズ  
5/26 アマチュア・オリジナル発表会  
5/28 パワーハウスB.B/大木トオル(予)  
5/29 飛べないアヒルコンサート  
5/30 佐渡山豊  
5/31 音と映像の世界/コスモス・ファクトリー  
三ノ輪「モンド」 1975年7月のスケジュール
ドリンク+チャージ(200〜700円) 6:30〜 アマチュアバンド募集中
7/1  アーカムハウス/俄  
7/3  桑名正博&デイリープラネット  
7/4  山岸潤史グループ(予)  
7/5  あんぜんBUND  
7/6  2:00〜: イエロー  
     6:00〜: 高田 渡  
7/7 ハリマオ  
7/9 つのだひろ&スペースバンド/ボビー&リトルマギー
7/10 オレンジ・カウンティ・ブラザース  
7/11 佐渡山豊/下村明彦  
7/12 金子マリ&バックスバニー  
7/13  2:00〜: 外道  
     6:00〜: コスモスファクトリー  
7/14 ファッツボトルB.B  
7/15 甲斐バンド  
7/16 めんたんぴん  
7/17 頭脳警察  
7/18 三上寛+異邦人  
7/19 豊田勇造  
7/20 2:00〜: アマチュア・デー  
     6:00〜: 中山ラビ/山下成司  
7/22  柳ジョージ&レイニーウッド  
7/23  柳ジョージ&レイニーウッド  
7/24  クリエーション  
7/25  古田甚一/丸山拓一/中川たかし  
7/26  ウィーピング・ハープ・セノオ&ヒズ・ローラーコースター
7/27  2:00〜: センチメンタル・シティーロマンス  
     6:00〜: ウエストロードB.B  
7/28  ウエストロードB.B      
 
*関西方面のミュージシャンも結構出ている、わざわざ呼び寄せた!?
   他の場所とのパッケージだとは思うがウエストロードB.Bなどは連日で
 の出演である。
 
1975.7  
夢来館の「ぴあ」初登場は1975年7月号からである。
※当時の「ぴあ」に基づく
綾瀬「夢来館」 1975年7月のスケジュール
  ドリンク+ショーチャージ(100〜400円) 7:00〜  
7/2   SIMPLE MUSIC  
7/5   中川五郎  
7/9   中島たずお  
7/12  古田甚一  
7/16   フィルムギャラリー「宮村砂生郎」他  
7/19   多田団吉  
7/23    
7/26  友川かずき  
7/30 田代友也/メロン・ハウス      
 
 
 
1976.2頃  
そしてとうとう島津貫司は、夢来館を飛び出し、北千住、区役所前にライヴハウス「甚六屋」を立ち上げるのである。
夢来館の方はというと、仲間や常連客など数名が代わる代わる店長を務め数ヶ月間存続したが、その後は閉店している。
開店当初の甚六屋店内

 

 

 

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